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kukkanen’s diary

障害年金で暮らす片づけられない女の日記

精神障害年金の地域差問題に関する厚生労働省の資料を発達障害当事者目線で読んでみる

障害年金
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障害年金の審査に地域差

昨年、障害年金に関するこんな報道が話題となりました。

病気やけがで一定の障害がある人が受け取れる国の障害年金で、申請に対する支給・不支給の判定結果に都道府県間でばらつきがあり、不支給の割合に最大約6倍の差があることが24日分かった。

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障害年金判定に地域差 12年度不支給率、佐賀は最高|佐賀新聞LiVE

厚生労働省の専門家検討会

そして、2015年2月19日に第1回「精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門家検討会」が開かれ、その資料がPDFで公開されました。

この検討会の主な議題は次の2点です。

  1. 精神・知的障害に関する障害認定基準等について
  2. 障害基礎年金の障害認定の地域差に関する調査について

精神と発達の障害の当事者として、私が気になった点を以下に抜粋してみます。

障害別の障害年金審査基準

(資料2)国民年金・厚生年金保険障害認定基準〔第8節/精神の障害〕(PDF:537KB)に現行の認定基準と、平成23年と平成25年の改正時に伴う新旧対応表が掲載されています。

障害年金は3段階*1の等級がありますが、身体を含めたどの障害にも共通する簡単な目安として以下の内容が挙げられています。

等級状態
1級 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度
2級 日常生活著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度
3級 労働著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの、及び労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度

つまり、1級と2級は日常生活、3級は労働がどの程度困難なのかが基準となります。例えば、失明してしまったとか、人口透析を受けているといった場合など障害別の具体的な認定基準は年金について - 国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 | 日本年金機構に公開されています。

前述した報道「障害年金判定に地域差 12年度不支給率、佐賀は最高|佐賀新聞LiVE」では、認定基準に関してこんな問題点を指摘しています。

審査に当たる医師(認定医)に個人差があり、精神、知的障害の程度で判断が分かれやすいことや、年金機構の出先機関ごとの取り扱いの不統一が原因とみられる。

統合失調症、双極性障害、うつ病などの審査基準

資料2ページ目に「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害」という項目があり、その障害の等級別の状態を例示しています。

ここでいう気分障害とは、双極性障害うつ病などを指します。

"統合失調症や気分障害ならではの状態"と私が考えるところを太字にしてみました。

等級状態
1級

1. 統合失調症によるものにあっては、高度の残遺状態又は高度の病状があるため高度の人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験が著明なため、常時の援助が必要なもの

2. 気分(感情)障害によるものにあっては、高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの

2級

1. 統合失調症によるものにあっては、残遺状態又は病状があるため人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があるため、日常生活が著しい制限を受けるもの

2. 気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの

3級

1. 統合失調症によるものにあっては、残遺状態又は病状があり、人格変化の程度は著しくないが、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があり、労働が制限を受けるもの

2. 気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくないが、これが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの

発達障害の審査基準

資料6ページ目に、最近申請が増えているといわれる「発達障害」の審査基準も掲載されています。

等級状態
1級 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの
2級 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの
3級 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの

発達障害の定義

この資料では、発達障害の定義を以下の文章で示しています。

発達障害とは、自閉症アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害学習障害注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものをいう。

発達障害とその他の障害との関係性

「発達障害」は、資料5ページ目に説明がある「知的障害」とは別の障害として、認定基準が設けられています。

抑うつなどの二次障害が現れてから、発達障害と診断される大人が多いようですが、複数の精神障害を二重に認定することは行わないと書かれています。

発達障害については、たとえ知能指数が高くても社会行動やコミュニケーション能力の障害により対人関係や意思疎通を円滑に行うことができないために日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定を行う。また、発達障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。

また、3ページ目の認定要項に以下の記述があることから、発達障害と並んで取り上げられることの多い種々のパーソナリティ障害(人格障害)や強迫性障害パニック障害(神経症)などは、障害年金認定の対象とならないことがわかります。

(4)人格障害は、原則として認定の対象とならない。

(5)神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならない。

発達障害の初診日の扱い

障害年金を申請する際に、"20歳前に傷病を負った人"以外はその障害の原因となる傷病で初めて医療機関を訪れた「初診日」の記録が必要になります。

発達障害は、通常低年齢で発症する疾患であるが、知的障害を伴わない者が発達障害の症状により、初めて受診した日が 20 歳以降であった場合は、当該受診日を初診日とする。

国家公務員と一部の地方公務員はこの初診日証明ができなくても、自己申告だけで初診日が認められる制度が不平等だという報道がつい先日話題になっていました。

参考:東京新聞:障害年金 公務員支給条件で優遇 「初診」証明不要:政治(TOKYO Web)

発達障害の労働と日常生活の評価基準

前述したように他の障害でも共通する大まかな基準として、「2級は日常生活に著しい制限」そして「3級は労働に著しい制限」という等級別の状態があります。

資料7ページにある発達障害の日常生活や就労に関する補足情報を以下に抜粋しておきますが、いかようにも読めるのでその解釈は難しそうです。

就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。

したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。

障害基礎年金と障害厚生年金の違い

初診日に国民年金に加入していた人が受給できるのは障害基礎年金の1級または2級です。例えば、障害基礎年金のみ受給中の障害者がなんらかの形で働き出した場合に、次の更新審査*2でいきなり受給停止となると、経済面で大きな負担がのしかかることは間違いありません。

2級の障害基礎年金772,800円/年*3なので、これだけで生計を立てている人はいないでしょうが、その人が暮らしていく上で大きな支えとなっている場合、心のバランスまで崩れてしまう危険性があります。

一方、報酬比例分があり受給額*4が大きくなる障害厚生年金は金額の面で有利ですが、障害基礎年金のみの人なら2級に拾ってもらえる程度の状態でも、3級と認定されてしまう場合があると言われています。

ただし、これはあくまでも噂にすぎず、障害年金の不支給率に地域差があるのと同じように、受給審査を担当する個々の医師の判断次第ということになります。

精神の障害年金申請用の診断書

これから、障害年金を申請する人は(資料3)障害年金の診断書〔様式第120号の4〕(PDF:883KB)を参考にしてください。

この用紙は年金事務所から取り寄せますが、医療機関側でもWordなどでできたテンプレートがあるようです。

診断書の表面の内容(経歴など)

診断書は表と裏の2ページで構成されており、表面の主な項目に以下のものがあります。記入するのは主治医ですが、過去の治療歴や職歴など詳しく伝えていない内容については、紙に書いたものを渡すとよいでしょう。

  • 傷病の発生年月日と初めて医師の診療を受けた日(初診日)
  • 発病から現在までの病歴及び治療の経過、内容、就学・就労状況等、期間、その他参考となる事項
  • 発育・養育歴
  • 教育歴
  • 職歴
  • 治療歴(医療機関名、治療期間、病名等)

診断書の裏面の内容(生活の状況など)

診断書の裏面は、生活能力やその状況を評価する項目が並びます。以下の報道は、障害年金の更新審査に関するものですが、認定医不足から新規申請の場合もあまり時間をかけることができず、選択肢が明確で数値化できる診断書の裏面の内容が重視されると言われています。

認定医からは「更新のケースでは書類1件を十数秒で見ており、まともな審査はとてもできない」との声が上がっている。

障害認定医に地域差、最大14倍 年金支給に不公平も - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース

診断書裏面の左側の「日常生活能力の判定」欄では、下の例のように家庭や社会で生活するために必要なさまざまな能力を個別にチェックします。

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それぞれの項目の判断基準は、以下のように単身生活の可否を目安としており、現在の居住形態(同居者の有無、施設入所、入院等)を申告する欄もあります。

判断にあたっては、単身で生活するとしたら可能かどうかで判断してください。

障害年金の審査では、就労状況のみならず、単身で暮らせるかどうかが生活能力を判断する重要な基準となっているようです。したがって、症状は変わらなくても一人暮らしを始めたことによって、等級が下がったという話も耳にします。

診断書裏面右側には「日常生活能力の程度」欄があり、こちらは生活能力を総合的に5段階でチェックします。

発達障害の日常生活能力評価

(資料4)平成23年及び平成25年の精神・知的障害に関する認定基準及び診断書の改正について(PDF:351KB)の7ページ目に『発達障害における「障害等級」と「日常生活能力の程度」の相関性』という表があります。

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この表で「日常生活能力の程度」(診断書裏面右側の5段階による総合評価)とそれに該当する障害年金の等級がわかります。そして、「日常生活能力の判定」(診断書裏面左側の4段階による個別評価)の対応も以下の表のように想像できます。

※ 「自発的にできるが時には助言や指導を必要とする」と「自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる」の個数と、どの項目についているかで総合的に判断されると思われます。

日常生活能力の程度日常生活能力の判定等級
(1)精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の介助が必要である 「できない若しくは行わない」が多い 1級
(2)精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である 1級または2級
(3)精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である 2級または3級
(4)精神障害を認め、家庭内での日常生活は、普通にできるが、社会生活には、援助が必要である 3級
(5)精神障害を認めるが、社会生活は普通にできる 「できる」が多い 不支給

ヒアリングからわかる障害年金の審査要件

(資料5)障害基礎年金の障害認定の地域差に関する調査(PDF:1,593KB)の18ページに「障害基礎年金の障害認定の地域差に関するヒアリングで得られた主な意見」と題する表があり、不支給割合の低い県と高い県から寄せられた意見が掲載されています。

診断書における日常生活能力の評価について2級該当の目安はあるか?

この質問に対する不支給割合が低い県の回答です。

「日常生活能力の程度」で(2)が2級該当の目安である。(4)が1~2級、(5)が1級。

判定については「物理的にでき る」と「自発的にできる」は異なるが、「物理的にできる」かどうかを記載している診断書がある。

(2)で判定がすべて 「できる」であれば等級非該当となる可能性はある。

※上記の「判定」とは、「日常生活能力の判定」(診断書裏面左側の4段階による個別評価)のことです。

そして、不支給割合の高い県の回答を見ると、審査基準が異なることがわかります。

「日常生活能力の程度」で(3)、(4)が2級の目安である。ただし診断書作成医の特徴が表れてしまうので、表面の症状とあわせてチェックしている。

「日常生活能力の程度」の方が重要である。 「日常生活能力の判定」はライフスタイルや傷病により違ってくる。例えば、発達障害は食事摂取などの日常生活は問題なくできる。ここは a であっても問題ない。コミュニケーション能力が悪ければ2級となりえる。

認定する際に重視する診断書の記載事項があるか?

以下は不支給割合が低い県の回答です。

病状と日常生活能力がかい離している場合は日常生活能力を重視している。

診断書表面に記載されている病状(診断書⑩ア、イ欄)を主として、状態像を把握している。

以下は不支給割合が高い県の回答です。

単身生活である場合は、その理由や背景を含めて、日常生活状況の詳細を確認して認定している。

治療の経過(⑦欄)、診断書作成医療機関における初診時所見(⑧欄)、発育・養育歴等(⑨欄)、障害の状態(⑩ア、 イ欄)を重視して、日常生活能力の評価(⑩ウ2,3欄)との整合性を確認する。

不整合の場合は、病歴申立書が参考となる。

※上記の「病歴申立書」とは、病歴・就労状況等申立書のことで、患者本人または家族や社会保険労務士など代理の者が記入して提出します。

年金について - 病歴・就労状況等申立書を提出しようとするとき | 日本年金機構に記載要領と、PDFとExcelによる様式が公開されています。

診断書以外に参考としている提出書類があるか?

以下が不支給割合が低い県の回答です。

療育手帳の認定結果と齟齬が出ないように参考としている。乖離があれば照会している。

精神保健福祉手帳はあまり参考にしていない。

以下が不支給割合が高い県の回答です。

療育手帳と精神保健福祉手帳は参考にしている。

療育手帳についても、障害年金と同様にIQだけではなく日常生活能力における障害を評価していることから参考にしている。

病歴申立書は、迷ったときには参考となる。

※精神保健福祉手帳も1級から3級までの等級設定がありますが、2級の手帳を持っているからといって障害年金が2級に認定されるとは限りません。逆に、障害年金受給が決まってから、自治体の窓口に申し出ると障害年金と同じ等級の精神福祉手帳をもらえる場合があります。

就労していた場合、どのような点を重視して判定しているか?

以下は不支給割合が低い県の回答です。

勤続年数を重視している。一般就労でも勤続1年未満であれば3級とは考えにくい

一般就労であれば、日常生活能力が高いと評価される場合もあるが、常に就労が中断する可能性があることを考慮して認定している。

以下は不支給割合が高い県の回答です。

勤務年数と頻度を重視して認定している。(ただし、就労状況は参考にする程度とのこと)

原則、就労支援施設であれば日常生活能力が高いとはしていない。

以上のヒアリング内容から、不支給割合が低い県と高い県では、日常生活能力(診断書裏面の4〜5段階)に関する評価が異なるようですが、その他の要素は地域に関係なく、認定医個々人の方針次第なのかなという印象です。

*1:初診時に厚生年金や共済年金に加入していた人は1〜3級。国民年金に加入していた人や成人前発症の場合は1級と2級のみ

*2:状態が固定される身体障害とは違って、症状が変わる可能性のある精神障害は数年に一度更新審査があります

*3:子供の有無や20歳前傷病の場合の所得制限があるので詳しくは年金について - 障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法 | 日本年金機構参照

*4:給料や働いていた期間の年月を元に計算されます。詳しくは年金について - 障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法 | 日本年金機構参照