セクハラを受けて精神障害になった労災の決定件数は直近4年間で3倍以上に増加
ルミネのCMが炎上しているという情報は、ちらほらと目にしていましたが、これに関連して、厚生労働省が公開しているデータを取り上げている記事を今日初めて読んでみました。
セクハラを受けて精神障害になった労災の決定件数は、2013年度で52件です。2012年度の45件から増えています。厚労省サイトでさかのぼって確認できるのは2009年度までなのですが、2009年度の決定件数は16件です。この4年間で、セクハラを受けて精神障害になった労災の決定件数は3.25倍に増加しているのです。
精神障害での労災給付状況
上の記事で言及されている厚生労働省の調査資料を見ると、平成25年度の区分「精神障害」での労災請求は1,409件で支給が決定した件数は436件です。
平成25年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」を公表 |報道発表資料|厚生労働省別「添資料2(PDF:256KB)」
認定率の36.5%をどう評価していいのかわかりませんが、労災を請求した3人に1人は審査を通過して、保険金を受け取っていると思われます。
「勤め先の上司からパワハラを受けて、うつ病になったので労災を申請したい」と息巻いている人がいるというのは、ネット上のメンヘラ界隈でよく見かける光景です。
ですが、前の項で抜粋した厚生労働省の資料を見ると、件数は増加傾向にありますが、毎年千人程度の人しか精神障害による労災を請求していない現実があります。
労災(労働災害)とは
それでは、労災とはどのような制度なのか改めて、《労働災害が発生したとき |厚生労働省》からポイントとなる点を抜粋してみます。
労災の請求方法
「労働者の方へ」という見出しの下にこんな説明があります。
労働災害によって負傷した場合などには、労働基準監督署に備え付けてある請求書を提出することにより、労働基準監督署において必要な調査を行い、保険給付が受けられます。
この説明だけだと、労働者側が所定の用紙を提出すれば、審査が進むように読めます。しかし、リンク先の資料にある「手続きの流れ」という図解を見ると、事業主が労災請求書を証明しなければいけないことがわかります。
労災請求を会社が拒んだ事例
労災請求に関して、こんな相談内容を見かけました。
Q:労災申請もダメ? 会社を休むのもダメ?
業務上(重量物運搬)で腰椎椎間板ヘルニアになりました。会社に相談をしたところ、「労災申請をするな、そして休むな」と言われ、症状は悪化していき最終的には緊急入院をし、手術を受け、障害認定となりました。
おそらく、労災の請求に際して、会社側が証明を拒み、労働基準監督署に申請書類を提出できなかったということでしょう。
労災の認定基準
この質問に対して、弁護士は以下のように回答しています。
ご相談者さんの場合ですと、重量物運搬というお仕事のせいで怪我をしていますので、まさに「業務上の事由」に当たります。なので、労災認定が認められ、労災保険金がもらえることになります。
怪我など身体の病気であれば、それが業務に起因するものかどうかの判断が容易なケースが多いのでしょう。
しかしながら、精神に関することは「障害年金の審査でも地域差が最大で6倍の開きがある」ことからわかるように、それがまず「障害」といえるものなのかどうか、そして原因が業務によるものなのかどうかといった難易度の高い二重の判断基準が求められます。
精神障害の労災認定基準
精神障害の具体的な労災認定基準として、厚生労働省の指針を解説する書籍が発行されています。
![]() 【送料無料】 新・精神障害の労災認定 「心理的負荷による精神障害の認定基準」の詳解 / 労働調... |
実際に労災認定に挑戦した当事者の手記も数多く出版されています。
![]() リストラウォーズ 女ひとり、会社に宣戦布告する! 労災認定、未払い賃金、パワハラ・セクハラ、... |
一方で、精神疾患を理由に休職者が発生した職場に残された側の人たちの疲弊という問題に着目し、特に新型うつ病などと呼ばれ「仕事はできないけれど、遊びに行く元気はある」といった昨今問題視されている事象を厳しく批判する書籍もあります。
![]() 心の病が職場を潰す |