ブルーライトアップされた世界自閉症啓発デー
4月2日は国連が定めた世界自閉症啓発デーで、2015年のこの日の夜も世界中のモニュメントが青く染まりました。
ノヴォシビルスクというシベリアの街でも、チャリティイベントが開かれたことをFacebookとFlickrで知りました。
Mikhail Koninin - Благотворительная акция "Зажги Синим" /... | Facebook
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はてなブログ発の #啓発記事コラボ
id:nanaioさんの呼びかけで、世界自閉症啓発デーにあわせて、自閉症、自閉症スペクトラム、そしてこれらに分類されないADHDやLDといった発達障害全般をテーマにした記事が募られました。
ちなみに、「ADHDでかつアスペルガー」といった従来は認めれていなかった併症が、DSM-5*1では既存の診断名の再編成とともに、「ADHDであっても同時に自閉症スペクトラム」という診断が可能になったそうです。
自閉症スペクトラム障害との並存が公式に認められたことで、日本でも 医師による診断のばらつきが若干減ってくることになるのではないかと思います
DSM-5 での注意欠如多動性障害(ADHD)の取り扱い - A Fickle Child Psychiatrist
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Twitter上の「#啓発記事コラボ」タグには、寄稿された記事を読んだ方からのポジティブな感想がたくさん寄せられました。
ADHD受診を決意した増田も登場
そして、はてな匿名ダイアリーでは、こんな投稿が話題となりました。
大人の発達障害を診てくれる医療機関を探し、電話をかけた。
予約は一ヶ月半待ちだった。
いまの自分の状態を説明しながら、ようやく人に話せた安心感で、涙が出てきたことを覚えている。
もうすぐその予約の日がやってくる。
もし診断結果が予想と違っても、この悩みを専門家に相談できる。
ただそれを考えるだけで、いい大人がまた涙を流しそうになる。
いつもは手厳しい"はてブ"のコメント欄も、増田*2への温かい声で埋めつくされています。
ADHDに限らず、精神科での診断名や心療内科で「あなたは何も悪くない。ストレスの原因から離れ、ゆっくり休んで」という言葉をかけてもらいたい人は大勢います。
人の問題行動が、「障害」と認められるか、「甘え」と見なされるかで、世間の評価にあまりにも落差があることを、僕はものすごく悔しく思う。だから「診断」を欲しがる人々が大勢いるんだよ?
— 元ひきこもり、自閉症児のパパになる (@pori313) 2015, 4月 1
私自身もそうでしたが、検査費用がまだまだ高額だった時代でも光トポグラフィ*3の予約は数カ月先まで埋まっていた事実から、当事者がいかに客観的で確実な診断名を切望しているかは明白です。
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一方で啓発活動や当事者に厳しい声も
東京タワーなどのブルーライトアップや、#啓発記事コラボ など、今回の活動をきっかけに「自閉症スペクトラムという障害を知った」「発達障害の当事者が実際にどんな苦労をしているのかわかった」というツイートをたくさん目にしました。
啓発活動が目的としていた一般の方への発達障害の認知度を高めるという目的はじゅうぶん果たすことができたと思います。
一方で、本来なら連帯すべき相手である当事者からの厳しい批判も、数多くタイムラインに流れました。
ま、「社会に理解を広めることこそが必要」ってな啓発で「自分は理解、配慮されるべき存在だ」という反転・拡大解釈する成人当事者は大量発生したわけで、誤学習ってものが見えやすくなったって成果はあるかもだなw。ここまで見えやすいんだからちゃんとフィードバックしろよ>語りたがる専門家
— 狸穴猫/松村りか (@mamiananeko) 2015, 4月 4
でも、やっぱり周囲の理解は必要!特に子供の発達障害には
函館で小児科医として、発達障害の支援活動に携わっている先生が #啓発記事コラボ にこんな記事を寄せてくれました。
うつなどの二次的な精神障がいを併発している場合、著しい誤学習を積んでいる場合、家族関係、経済状況などに問題を抱えている場合など、大人の診療には子どもとは違った難しさがありました。そのような困難な状態はご本人がもともと持っている特性による部分もありましたが、明らかに周囲の理解が不足しているために状態を悪化させていることも少なくありませんでした。
...(略)...
ごく一部の理解のある人たちに囲まれているときには比較的落ちついて過ごすことができ、めざましい成長が見られていたのは確かでしたが、そこから一歩外に出ると結局は居場所があまりないのです。さらに私を愕然とさせたのは、周囲の理解が得られない場合には自分の診断がしばしば不利益をもたらし、当事者やご家族をむしろ傷つけてしまう結果になるという現実でした。
23. 世界自閉症啓発デーにかける思い - 発達診療の窓から
大人の当事者が「発達障害への理解」を求めることは、「"甘え"と批判されないための免罪符」を得たいという側面を否めませんが、支援者であるこの医師は活動への思いをこうつづっています。
そのような人たちと共に生きていくことのできる社会を考えることは、多くの人たちにとって生きやすい社会を考えることにつながる部分があるということを知ってもらいたい、と。
当事者同士の共感が難しいのも発達障害の特性ゆえに
発起人であるid:nanaio(なないお (@Nanaio627))さんの世界自閉症啓発デーの翌日(4/3)のツイートによると、32名の方が #啓発記事コラボ に参加してくださったようです。
寄稿記事の一覧は、Cook (@CookDrake)さんがトゥギャッってくれた以下のリンクにあります。
私は、まだ #啓発記事コラボ に参加した他の方のブログをほとんど読んでいません。寄せられた記事を「不毛」と切り捨ててしまうほどのネガティブな感情はないものの、鬱屈から吐き出された苦労話の数々を読み進めるエネルギーが不足しています。
自分が書いた記事でも取り上げたスペクトラムの概念図からもわかるように、当事者個人が持つ能力や障害特性はさまざまです。
したがって、#啓発記事コラボ に参加した方それぞれの物語があるはずなのです。これらを「冗長で似通ったエピソード」としか見れないところに、「共感性と想像性の欠如」という自分の障害特性が顕わになり、はっとしました。
そして、当事者同士では理解しあえなくても、この自主活動が「届くべき人にはしっかりと届いているんだな」ということも #啓発記事コラボ というハッシュタグを通して実感しました。
距離感の話を、腑に落ちやすい形で書かれてる。すごい。 RT @signe705: 自閉症スペクトラム的側面から見たわたしの時代 #啓発記事コラボ #世界自閉症啓発デー - c71の一日 http://t.co/R1Ab1abETp…私はこの記事にとても共感するし好きだなー
— dicegeist (@dicegeist) 2015, 4月 3
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*1:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 5th Editionの略語で米国精神医学会が発行している「精神疾患の診断・統計の手引き」参考:日本精神神経学会副理事長 神庭重信 | 会見記録/昼食会/研究会 | 日本記者クラブ JapanNationalPressClub (JNPC)
*2:はてな匿名ダイアリーの英語表記はAnonymous Diaryであることから、投稿主のことを「増田」と呼ぶ慣習があります。
*3:脳の血流を測定した波形から、「うつ病」「双極性障害」「統合失調症」「正常」を区別する検査ですが、これだけでは確定診断となりません。参考:うつ病の客観的な診断を目指す光トポグラフィー検査|先進医療最前線|先進医療.net