はじめに
このブログを始めて間もない頃に、こんな記事を書きました。
あれから実際に作業所の見学に行き、悩みつつも通い始めようかなと思っているところです。
自分の備忘録を兼ねて、 作業所の制度についてまとめてみます。
作業所の種類と対象者
「作業所」とは障害者向けの就労施設の俗称であり、障害者総合支援法に基づく事業所の正式名称は以下の4種類があります。
より一般企業への就職に近い(ハードルが高い)順に並べてみました。
正式名称 | 主目的 | 一般就労 | 勤怠 |
---|---|---|---|
就労移行支援 | 就職のための訓練 | 見込まれる | |
就労継続支援A型 | 就労の機会提供 | 困難 | 厳しい |
就労継続支援B型 | 生産活動の機会提供 | 困難 | 体調の波があること前提 |
地域活動センター | 創作や交流 |
勤怠はそれぞれの事業所によって管理基準が異なりますが、A型はアルバイトなどと同様に雇用契約を結ぶことから、予め決められた時間に勤務することを前提としています。
15 就労継続支援A型(雇用型)
企業等に就労することが困難な者につき、雇用契約に基づき、継続的に就労することが可能な65歳未満の者下記の対象者に対し、生産活動その他の活動の機会の提供、その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、その他の必要な支援を行います。
障害福祉サービスの内容|厚生労働省
したがって、通院など事前に予定されていた日以外にいきなり休むなどということに対して、一般企業並に小うるさいことを言われるようです。
![]() 終わりの始まり 障害者自立支援法違憲訴訟の訴えること (単行本・ムック) / 障害者自立支援法... |
賃金と工賃
A型の作業所は、一般企業と同じように雇用契約を結ぶので、時間給は都道府県ごとに定められた最低賃金以上となります。
その他の作業所は、歩合制などでわずかな工賃が支給される場合がありますが、基本的には収入を得るための勤務先ではなく、日中時間をつぶせる場所を提供してくれる福祉サービスです。
正式名称 | 雇用契約 | 収入形態 | 月額平均 | 時間平均 |
---|---|---|---|---|
就労移行支援 | × | 実習時のみ工賃 | ||
就労継続支援A型 | ◯ | 最低賃金保障 | 69,458円 | 737円 |
就労継続支援B型 | × | 歩合制工賃 | 14,437円 | 178円 |
地域活動センター | × | 歩合制工賃 |
出典: (参考資料3)日本年金機構の障害年金に係る実施体制(PDF:295KB)精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門家検討会審議会資料 |厚生労働省
作業所の報酬算定構造
作業所は、公的な福祉サービスという位置づけであり、以下のように国(自治体?)に報酬(平成27年度)を請求します*1。
計算式 | 報酬単位 × 10 × 利用日数 = 事業所の収入 |
---|---|
A型を22日出勤予定で 2日突然休んだ場合 |
( 519 × 10 × 20 )+ ( 94 × 10 × 2 )= 105,680円 |
主な費目を下表に挙げてみました*2。
費目 | 移行支援 | A型 | B型 |
---|---|---|---|
サービス費 | 711 | 519 | 519 |
欠席時対応加算 | 94 | 94 | 94 |
食事提供体制加算 | 30 | 30 | 30 |
送迎加算(片道) | 27 | 27 | 27 |
就労定着支援体制加算 | 28〜146 | ||
移行準備支援体制加算 | 41・100 | ||
就労移行支援体制加算 | 26 | 13 | |
施設外就労加算 | 100 | 100 | |
目標工賃達成加算 | 69 |
出典: 「障害福祉サービス費等の報酬算定構造」(PDF) - 平成27年度障害福祉サービス等報酬改定について |厚生労働省
食事提供体制加算
作業所内で昼食などを提供できる体制を整えた場合に、事業所は公的給付を30単位(約300円/1食分)請求できます。
世帯所得が低い利用者はこの体制の対象となり、食費が実費のみ自己負担となりますが、完全無料で昼食を提供してくれる作業所もあるようです。
食費のうち、人件費相当分を給付し、利用者の食費負担を食材料費相当に
障害者自立支援法における利用者負担の基本的な枠組み(PDF) - 厚労働省
送迎加算
通所する人の大部分は、既に障害者手帳などを取得しており、自治体が公共交通機関の運賃を助成しているものと思われますが、地の利の悪い場所にある作業所は送迎サービスを行っています。
就労定着支援体制加算
平成27年度より新設された費目で、一般就労後の定着率により、就労移行支援事業所が評価されることを意味します。
一般就労への定着支援を充実・強化するため、現行の就労移行支援体制加算を廃止し、利用者の就労定着期間に着目した加算を新たに創設
一般就労移行後、就労継続期間に応じて、以下の区分に応じた単位数をそれぞれ加算
「障害者の就労支援について 平成27年3月17日」(PDF) - 厚生労働省
6〜12月未満 | 12〜24月未満 | 24〜36月未満 | |
---|---|---|---|
5〜15%未満 | 29 | 25 | 21 |
15〜25%未満 | 48 | 41 | 34 |
25〜35%未満 | 71 | 61 | 51 |
35〜45%未満 | 102 | 88 | 73 |
45%以上 | 146 | 125 | 105 |
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移行準備支援体制加算
就労移行支援事業所は2年間の通所期限があり、終了後に一般就労できるよう実務に則した企業実習が行われます。
その支援内容ごとに単位が設定されています。
支援内容 | 単位(日) |
---|---|
職員同行により企業実習 | 41 |
請負契約を結んだ企業内で作業 | 100 |
就労移行支援体制加算
A型とB型の作業所から一般就労等へ移行した後、継続して6ヶ月以上就労している者が、定員の一定割合以上いる場合に加算されます。
施設外就労加算
A型やB型の作業所が外部の企業などと請負契約を結び、利用者を働かせる場合の加算です。
参考: 「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について」(PDF)- 厚生労働省
目標工賃達成加算
B型作業所における工賃向上に向けた取組を推進するため、一定の水準に達している事業所を評価する加算です。
「平成27年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(案)骨子版」(PDF)- 厚生労働省
- 前年度の工賃実績が、原則、前々年度の工賃実績以上
- 前年度の工賃実績が、地域の最低賃金の1/2以上
- 前年度の工賃実績が、都道府県等に届け出た工賃の目標額以上
- 工賃向上計画を作成していること
利用者の自己負担
なお、作業所に通う利用者の自己負担額は世帯収入により異なります。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
一般 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) | 9,300円 |
一般 | 上記以外 | 37,200円 |
出典: 障害者の利用者負担|厚生労働省
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