はじめに
青二才さんの記事に倣って、メンヘラ歴の長い私もこのテーマで1本書いてみたいと思います。
(1)心療内科と精神科のどっちを受診すべき?
参考までに「精神科」と「心療内科」の定義を厚生労働省の公式サイトから抜粋します。
精神科、精神神経科
「精神科」、「精神神経科」は同じものです。どちらかが書いてある場合や、併記してある場合は、「うつ病」「統合失調症」「神経症性障害」などのこころの病気を診ている、精神科の医療機関と考えて間違いありません。
心療内科
「心療内科」は心理的な要因で身体の症状(胃潰瘍、気管支ぜんそくなど)が現れる、いわゆる「心身症」を主な対象としています。
しかし、「心療内科」と看板に書いてあっても、実際にはこころの病気を診ている医療機関がたくさんあります。ただし、こころの病気を全て診るわけではなく、軽い「うつ病」や「神経症性障害」など一部のこころの病気しか診ないところもあります。
医療機関の探し方、選び方|医療や医療機関|治療や生活へのサポート|メンタルヘルス|厚生労働省
結論からいうと、ガチな精神疾患の既往歴がなく、初めて「心の病かも?」と思った人はどっちを受診してもいいです。というのも多くのメンタルクリニックは、「精神科」と「心療内科」の両方を標榜しています。
(2)精神保健指定医なら安心なの?
精神科のWebサイトを見ると、医師紹介欄に「精神保健指定医」と書かれていることがあります。聖マリアンナ医大でこれが不正取得されていた問題が明るみに出たのが記憶に新しいです。
精神保健指定医の資格取得には一定の実務経験に加え、資格を持つ指導医の下で統合失調症などの患者8例を診断したリポートの提出が求められる。
厚労省によると、11人は自分が診察していない患者のリポートを提出したり、他の医師が診察した患者の症例をコピーしたりして審査を受けていた。
精神保健指定医という資格を持っているかどうかで優劣が決まることはありませんが、とりあえず何年か精神科での実務を積んだ医師であることがわかります。
メンタルクリニックのように個人で開業している先生が、精神保健指定医を持っている場合、経歴欄を見ると「20**年: ◯◯病院精神科に入職」などのように有床の精神科医療機関に在席していたことがわかります。
逆にいうと、このような精神病院や総合病院の精神科を受診すると、まだ指定医を取得していない、つまり経験の浅い先生が主治医となる可能性もあります。だからといって、心配する必要はありません。資格取得済の上級医と共にチーム医療にあたっています。
診療科の組み合わせごとの特徴を下表にまとめましたが、「精神保健指定医」の有無はその先生の本来の専門が何なのかを判断する一つの基準となります。
心療 | 内科 | 精神科 |
精神保健 | よくあるパターン |
---|---|---|---|---|
- | ◯ | ◯ | ◯ | いわゆる「精神病院」で病棟もあり、身体科の医師もいる |
◯ | - | ◯ | ◯ | 精神科で経験を積んだ先生が開業したクリニックなど |
◯ | - | ◯ | - | 標榜しているその他の診療科や医師の経歴を確認しないと特徴がわからない |
◯ | ◯ | - | - | ホームドクター的な内科の先生が「心療内科」の看板も挙げている |
◯ | - | - | - | 大学病院などにあり、心身症を専門とする |
「心療内科」の記載があり、「精神保健指定医」ではない先生の多くは、他の科を専門としており、例えば「麻酔科」ならペインクリニック、漢方内科などです。
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(3)病院の規模で違いはあるの?
病院の規模により大きく条件が違うのは、検査と入院といった設備面です。
心理検査や精密検査など
一般的なメンタルクリニックでも、血液検査や尿検査くらいはできますが、WAISなどの心理検査やMRIといった設備や専門のスタッフが必要な精密検査は、提携先の病院を別途予約しなければいけません。
「心の病気」だと思って受診したら、実は他の身体疾患が見つかるというパターンや、心理検査で発達障害が判明するケースもあります。
重症化した際の入院
入院が必要になった場合、始めから有床の病院を受診していれば、同じ主治医に担当してもらえる可能性が高くなります。
規模と種類で比較したメリットとデメリット
精神科クリニック | 総合(大学)病院精神科 | 精神病院 | |
---|---|---|---|
紹介状 | 不要 | 必要 | 不要 |
初診予約 | 当日〜数ヶ月待ち | とりづらい | 比較的とりやすい |
検査 | 提携先 | 院内 | 院内 |
入院 | 提携先 | 院内 | 院内 |
時間外 | × | △ | ◯ |
立地 | 交通の便良し | ◯ | 山の中にあることも |
外来時間 | 夜間・土曜もある | △ | △ |
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(4)初診の予約をとるのは大変なの?
これは、それぞれの医療機関により千差万別で「もう何年も初診は断っている」という人気クリニックもあれば、「当日初診 精神科 (地名)」で検索すると飛び入りOKな病院も沢山あります。
初診の所要時間
どこの病院も初診に30分〜1時間程度の時間をかけます。
- 問診票の記入
- 臨床心理士または看護師による予診(省略される場合もある)
- 医師による診察
![]() 精神科における予診・初診・初期治療 |
Web上に公開された問診票に入力したものを送信したり、印刷して持参したりすることができる病院もあります。
どこを訪ねても初診で聞かれることはほぼ同じなので、以下のページにある内容を参考にして、既往歴や症状などを箇条書きにして持っていくと話がスムーズになります。
WEB問診票 | 千葉県精神神経科診療所協会
繁盛していれば、名医なの?
一人の患者に時間がかかることから、 なかなか初診予約がとれないと言われる精神科ですが、混雑しているからといって良い病院とは限りません。かと言って、手当たり次第に電話をかけて、空いているクリニックに駆け込むこともお勧めできません。
(5)自分にあった精神科を選ぶベストプラクティスは?
さまざまな角度から精神科の形態を比較してみましたが、症状だけでなく、性格面での相性が良い主治医と出会うまで、皆さん試行錯誤を繰り返されているようです。
セカンドオピニオンをテーマにした記事でも書きましたが、「紹介状は不要」とされている病院でも、たいていの場合は「精神科にかかるのが初めての人」に限った話です。
精神科を転院またはセカンドオピニオンを受ける場合は、原則として受診中の医療機関からの紹介状がないと受け付けてもらえません。
したがって、そう簡単に転院はできないことを前提に治療を開始しなければいけません。
最後に精神科を選ぶための3つの手段とそれぞれの長所短所を箇条書きにします。
ネットで検索
◯ | 診療時間や最寄駅などを条件に簡単にしぼりこめる |
---|---|
△ | 患者同士の口コミはあてにならない |
保健所や精神保健センター
◯ | 診療時間や最寄駅などを条件に簡単にしぼりこめる |
---|---|
△ | 患者同士の口コミはあてにならない |
かかりつけ医からの紹介
近所の内科などかかりつけの医療機関がある方は、そこの先生から精神科を紹介してもらうのがベストです。
メリットは以下3点です。
- プロ同士で評判の良い地域の医療機関を知っている。
- 精神科初診の予約がとれるまでの間、睡眠薬や抗不安薬などとりあえず症状を抑えるための処方をしてくれる。
- 紹介状を書いてもらうと、大きな病院にかかる際に初診時特定療養費(病院ごとに設定料金が異なり数千円〜)の負担がなくなる。
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