専門家検討会で都道府県別の障害年金判定データが公開
再三に渡り、障害年金の審査に地域差がある問題を取り上げるニュースを目にするので、自分が住んでいる都道府県の判定基準を知りたい人も多いことかと思います。
そこで、今回は以下の記事にある《精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門家検討会 |厚生労働省》が公開している資料の読み方を説明します。
地域による判定のばらつきは昨年、共同通信の取材で判明。厚労省と年金機構が対応に乗り出したのはその後で、今年2月に専門家検討会を設置し、客観的な判定指標の策定などを進めている。
障害年金地域差、3年放置 厚労省、認識後も調査せず - 47NEWS(よんななニュース)
診断書を確認する際のポイント
厚生労働省の専門家検討会が公開している資料は、以下の3種類に分けることができます。
- 各都道府県と本部(障害厚生年金)における項目別の不支給率(数値データ)
- 一部の県と本部で審査にあたる認定医の声(議事録とヒアリング内容)
- その他(関係団体からの意見や、障害者向けの制度説明など)
この中で、数値化することにより客観視が容易になった不支給率のデータが、診断書のどの欄を指しているのかを説明します。
議事録で公開されている認定医の声を元に、判定時に重視される項目を順に並べてみました。
項目 | 評価内容 | 診断書内の位置 |
---|---|---|
日常生活能力の程度 | 総合的な重症度を5段階 | 裏面右側 |
日常生活能力の判定 | 7種類の生活の場面を4段階(俗称ABCD評価) | 裏面左中ほど |
同居の有無 | 家族構成、入院・施設など | 裏面左上 |
就労の有無 | 一般就労、作業所など | 裏面左下 |
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診断書の見方は、以下の記事を参考にしてください。
障害基礎年金は各都道府県、障害厚生年金は本部で審査される
まず、初診日にどの年金制度に加入していたかで「障害基礎年金」と「障害厚生年金」に分かれます。
基礎 | 厚生 | |
---|---|---|
等級 | 1・2級のみ | 1〜3級 |
対象 | 右記以外 | 初診時に厚生年金に加入していた人 |
審査 | 各都道府県 | 本部 |
障害基礎年金を申請する人は、専門家検討会で公開されている資料のうち、お住まいの都道府県の欄を参照してください。
実際には下表に示すように、障害厚生年金は障害基礎年金と2階建ての構造となっていますが、審査は年金機構の本部で一括して行われます。
基礎 | 厚生 | |
---|---|---|
1級 | 975,100円 | 975,100円+報酬比例*1.25 |
2級 | 780,100円 | 780,100円+報酬比例 |
3級 | なし | 報酬比例または最低保証の585,100円 |
障害厚生年金の審査基準は以下の記事を参考にしてください。
日常生活能力の"程度"と"判定"の見方
先日、書いた記事でも取り上げましたが、日常生活能力の"程度"と"判定"は、「b3c3d1(4)」などのように2ちゃんねるで語られるだけでなく、認定医も議事録で「ABCD評価」という言葉を使っています。
例えば、「b3c3d1(4)」は「日常生活能力の"程度"が(4)」で「日常生活能力の"判定"で、7項目をそれぞれ軽い方からa(できる),b,c,d(できない)と評価した際の個数を表しています。
重い方から2番目まで"判定"の個数で見る不支給率
日常生活能力の"判定"で重い方から2番目(cとd)の個数を「3以下」と「4以上」に分けて、都道府県と日常生活能力の"程度"別に不支給率(等級非該当率)を集計した表があります。
「b3c3d1(4)」は半数以上の都道府県で2級以上*2に該当しますが、佐賀県では25.0%、埼玉県では22.6%に及ぶ件数が不支給となっています。
「表1 精神障害・知的障害にかかる日常生活能力の程度別/判定(個数)別 等級非該当割合(平成24年度)」(資料4)障害基礎年金の障害認定の地域差に関する調査〔追加分析〕(PDF:543KB)| 精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門家検討会審議会資料 |厚生労働省
"判定"の平均点で見る不支給率
日常生活能力の"判定"を軽い方から1〜4点と評価して、この平均値別の不支給率も公開されています。
例えば、「b3c3d1(4)」なら下表にあるように平均点が2.71と計算されます。
評価 | 内容 | 点数*個数 | 合計 |
---|---|---|---|
a | できる | 1点*0個 | 0点 |
b | ↓ | 2点*3個 | 6点 |
c | ↓ | 3点*3個 | 9点 |
d | できない | 4点*1個 | 4点 |
合計 | 19点 | ||
平均 | 2.71点 |
"程度"が(4)で"判定"の平均が「2以上3未満」の列を見ると、大分県や茨城県では半数以上が不支給となっています。
「表2-2 精神障害・知的障害にかかる日常生活能力の程度別/判定(平均)別 等級非該当割合(平成24年度)」(資料4)障害基礎年金の障害認定の地域差に関する調査〔追加分析〕(PDF:543KB)| 精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門家検討会審議会資料 |厚生労働省
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就労と同居に関する都道府県別の不支給データ
各都道府県と日常生活能力の"程度"別に、不支給率を集計した表は以下の内容もあり、厚生労働省の公式サイト内に公開されています。
- 表3 精神障害・知的障害にかかる就労の記載ありの場合の日常生活能力の程度別 等級非該当割合(平成24年度)
- 表4 精神障害・知的障害にかかる就労の記載なしの場合の日常生活能力の程度別 等級非該当割合(平成24年度)
- 表5 精神障害・知的障害にかかる同居ありの場合の日常生活能力の程度別 等級非該当割合(平成24年度)
- 表6 精神障害・知的障害にかかる同居なしの場合の日常生活能力の程度別 等級非該当割合(平成24年度)
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*1:詳細な条件や計算方法: 年金について - 障害年金 | 日本年金機構
*2:「日常生活能力の程度」と等級の目安は: 精神障害年金の地域差問題に関する厚生労働省の資料を発達障害当事者目線で読んでみる - kukkanen’s diary