グザヴィエ・ドラン監督
「26歳にしてカンヌ受賞歴があり、イケメンでゲイ」という新進気鋭の監督のバックグラウンドを知ると、映画をファッションとしてとらえる人たちが注目するのは当然でしょう。
私が訪れたシネコンではないとある劇場でも、いかにも自分のスタイルを持っていますという風情の若い人が多かったです。
グザヴィエ・ドラン - Wikipedia
テーマは発達障害
つい先だって、NHKの番組でADHD当事者であることを公表した俳優の栗原類さんはこうコメントしています。
発達障害の子とその親と隣人。
それぞれが抱える問題があるからこそ互いを必要とする。
甘えもなくシビアに接することでそこにリアリティが生まれる。
COMMENT | グザヴィエ・ドラン監督 映画『Mommy/マミー』 オフィシャルサイト
物語の背景
公式サイトの説明では「養育を放棄」とショッキングな言葉を使っていますが、劇中の展開は日本でいう医療保護入院みたいな制度です。
親がサインすれば、暴力や窃盗など問題行動を起こした子供を施設に入れらるという内容です。
とある世界のカナダでは、2015年の連邦選挙で新政権が成立。2ヶ月後、内閣はS18法案を可決する。公共医療政策の改正が目的である。中でも特に議論を呼んだのは、S-14法案だった。発達障がい児の親が、経済的困窮や、身体的、精神的な危機に陥った場合は、法的手続きを経ずに養育を放棄し、施設に入院させる権利を保障したスキャンダラスな法律である。ダイアン・デュプレの運命は、この法律により、大きく左右されることになる。
医療や矯正施設ではどうにもならないのがADHDなのかな・・・
ネタバレになるので詳しくは書きませんが、端的にいうと「白人のDQN家庭」のお話です。
翻訳の仕事を得るのに必死な母親は学歴がないことがコンプレックス。肩に大きなタトゥーがあり、年齢にそぐわないファッション。
ADHDと診断された一人息子は、音楽とダンスだけが生きがいでジュリアード音楽院を目指しているけれど、なにひとつ具体的な努力ができない。つまり、日本の「マイルドヤンキーになりきれない発達障害の人」とペルソナがかぶります。
一昔前なら、少年院など拘置施設に閉じ込めておくしか手立てがなかった問題児ですが、今はADHDや発達障害というラベリングの元に医療が受け皿になっている現実がリアルに描かれています。
もし、ADHD当事者やその家族がこの映画になんらかの希望を見い出すことを期待するなら、鑑賞はお勧めできません。でも、障害が重症化してしまっている人ほど、心に響く作品であることはまちがいありません。
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グザヴィエ・ドラン監督はフランス語系カナダ人で、デビュー作も母子の葛藤を主題にしています。ハリウッド系にはない影を持ち、かつフランス本国とも異なる文化というジャンルが日本では希少なので評価に値します。
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